12月議会一般質問のご報告①【都立高校入試英語スピーキングテストは入試制度として適正か】

一般質問で質問しました。
立川市の回答(赤字)と合わせてご参照頂けますと幸いです。

原ゆきの質問Q(以降”Q”)
11月27日がスピーキングテストの実施日だった。試験中のトラブルの報告などは立川市教育委員会へ届いているのか、そういった聞き取りを市内各中学校へ行っているか。

立川市の回答A(以降”A”)
現時点、11月27日(日)の状況について、当日のトラブル等の報告につきましては受けていない。

Q.「前半組の声が隣の教室で待機している後半組の生徒に聞こえていた」ことや「受験生の体調不良に対応できなかった」など続々と当日のトラブル報告が朝日新聞はじめ各メディアでも取り上げられている。今後も丁寧な情報収集をお願いする。
9月の一般質問の中で、この英語スピーキングテストの申し込みに際し、保護者への同意の取り方についてどのような手段を取られたのか伺ったところ、「申し込みをする時点で同意を得たものと捉えている。本市では、学校や教育委員会が別途同意書等を取ることはない。」という旨回答されている。しかしながら、ここにきて、保護者の同意を得ることなしに生徒自身が個人情報を入力した事例が続々と集まっている。立川市ではこういった事例を把握しているか。

A.同意を得ないままの申し込みの把握というところだが、本市教育委員会には現時点で報告が上がっていない。また、そのような事例について保護者からの問い合わせがあった際は、東京都教育委員会に確認しながら対応していく。

Q.生徒が保護者の同意なく登録をしている場合、一私企業であるベネッセコーポレーションがそのように個人情報を取得するのは個人情報保護法の観点から問題があると考えるが。

A.個人情報は、東京都教育委員会が保有し、事業者が管理することとなっている。生徒が入力した個人情報は、基本協定及び実施協定に基づき厳重に管理され、ESAT-Jの実施に必要な目的のみに使われるため、問題はないと認識している。

Q.文書法制課に聞いたところ、個人情報保護の定めにはないものの、民法では未成年の個人情報提供についてのちに判明した場合では法定代理人が取り消すことができるということだった。法定代理人は、多くの場合は保護者になる。未成年ではまだ判断が難しい場合があるからということ。
今後、生徒の個人情報登録が必要な際には学校なり立川市教育委員会が保護者の同意があったかどうか確認できる仕組みにすべきと考えるが。

A.スピーキングテストの個人情報は、東京都教育委員会が保有し、事業者が管理しているため、立川市教育委員会として保護者の同意を確認することはしない。

Q.あくまで市教委がそういったことを確認できる仕組みにすべきかどうかをお聞きしているのだが、その点についてお答えいただけないか。

A.実施主体が東京都教育委員会という形になるので、その取扱いについて、立川市教育委員会として見解を申し上げる立場ではないと認識している。

Q.次に、東京都教育委員会からの通知やその周知への対応について伺う。11月2日に市内各中学校へ試験会場への通知がなされた。9月議会の一般質問の中で私が試験会場について伺った際に教育部長は「10月上旬に中学校を通じて周知するということになっている」との旨回答している。1か月程度この通知が遅れたわけだが、その間、保護者からの問い合わせなどはどういった状況だったか。

A.実態としては、時期が遅れたという事実はあった。それに関して、本市教育委員会への保護者からの問い合わせはなかった。

Q.この通知の遅れについて、立川市教育委員会として東京都教育委員会に問い合わせたり、通知を早めてもらえるよう要望したり、そういったことは行ったか。

A.学校からは通知の有無について本市教育委員会への問い合わせがあったため、東京都教育委員会の担当部署へ確認をしたことがあった。

Q.この通知の遅れについて、受験対象である中学3年生やその保護者へはどのように知らせたり、対応したりしたのか。

A.学校の方から、予定の時期に遅れているということなので、個別に対応したという内容になっている。ただ、必要に応じて市内の学校、各学校のほうには情報提供してきた。

Q.1か月遅れて通達された試験会場案内の通知の中は、「11月4日までに本通知内容を生徒や保護者に知らせるようにすること」という主旨の記載があったようだ。11月3日は祝日で、学校はもちろん教職員も週休日。この通知内容には無理がないか。職員は休日に出勤して保護者への周知の準備をしたのか。

A.スケジュールについては、少しタイトであったと思っている。ただ、そういった追加的な事務の方に教職員が対応したかというところについて、現時点で承知はしていない。

Q.事前に伺ったときには、立川市教育委員会として通知の簡略化について配慮いただいたということだった。その点については感謝申し上げる。
試験会場案内を保護者へ通知してからは、保護者からの問い合わせが相次ぎ、「放課後の1時間・2時間を保護者対応に使った日もある」と中学校の先生方から話を聞いている。これでは、教員の業務量を増やしているように思う。本テストについて、保護者の問い合わせ先を各学校ではなく、立川市教育委員会や他に問い合わせ窓口を設置することはできないか。

A.本事業について、東京都教育委員会が実施するものであり、相談窓口については実施主体である東京都教育委員会に一本化されることが望ましいと考えている。

Q.12月18日、本テストの予備日について伺う。予備日に本テストを受験する生徒はおよそ何人くらいになるか把握しているか。

A.予備日は、本試験を急遽欠席する生徒も対象となるため、現時点では把握できていない。

Q.11月27日実施の本テスト試験当日の監督者について伺う。
受験者への説明やテストの進行管理、トラブル対応等のスキルを身に付けた試験監督者を配置することは、入学試験と同等の厳正さが求められるテストには必須の条件である。しかし、必須条件を満たしているようには思えない。
たとえば、インターネット上には試験当日の監督者を募集するようなアルバイトや時間単位の派遣労働者の求人広告が散見された。そこには、「経験不問」「1日限定 空いた時間で稼げる」「シンプルワークで難しいことはない」「履歴書の準備の必要はありません」「面接もありません」等、採用時の審査が甘いことを「売り」にするものもあった。このように経験不問で試験の時だけ雇われるアルバイトや派遣労働者に大きく依存する形で公正公平かつ円滑なテスト運営ができるかは非常に疑問である。試験監督等の慎重な採用や念入りな訓練が必要なのは、コンピュータ方式のスピーキングテストにはトラブルがつきものだから。たとえばESAT―Jの実施団体が作成した報告書にも、昨年秋に実施されたプレテストにおいて、試験開始のタイミングに関わるトラブルや、イヤホンやヘッドセットに関する受験中のトラブル等が起こったことが報告されている。本来、このようなトラブルに対応することが試験監督や補助監督の仕事の一つだが、前述の報告書で報告された全23件のトラブルのうち17件が監督者に関わるトラブルだ。その中には大小の判断ミスに加えて、一般常識を欠く行為や特別措置が必要な受験者に対する不適切な発言などが含まれている。
また、解答音声データの回収ミスも大規模なコンピュータ方式スピーキングテストでは避けがたいもの。
特にESAT―Jのようなタブレット端末をオフラインにして実施する方式のテストは、ネットワークを利用する他の方式のものより解答データの欠損が発生する可能性が高いといわれている。このようなトラブルに備えるために、ESAT―Jではタブレット端末の内臓マイクを用いて解答音声の二重録音をしているそうだが、それでも8万人の受験者の全問分の解答を採点可能な音声と音量で確保するのはきわめて困難と思われる。入学選抜に用いるテストとして、万一に備えてこのあたりの透明性をどう担保するかも今後の課題だが、まずは解答音声データの回収漏れを極力防ぐために、監督者が機器の不具合や再試験対応などに関するとっさの判断を適切に行うことが必要だ。これらの問題は「監督研修・育成プログラムの充実」によって解決することになっているが、監督者の研修は主にWEB動画を用いて行うことになっており、一日限りで雇われる膨大な数のアルバイトや派遣労働者にそれらを期待できるのかも大いに不安。不安を残したままで見切り発車の入試導入をして、万一大きな事故があったときに生徒たちが被る被害は計り知れない。11月27日の試験はもうすでに実施されたが、冒頭申し上げたように、他地域でのトラブル報告が聞こえている。今後、立川市内からも重大のトラブル報告がされないか、冷や冷やしている。
12月18日の予備日には、受験者への説明やテストの進行管理、トラブル対応等のスキルを身に付けた試験監督者を配置するよう、立川市から東京都教育委員会に要望することはできないか。

A.試験監督については東京都教育委員会から委託された事業者が適切に確保することとなっている。初めての取り組みであるため、万全の体制で臨むものと捉えており、要望は検討していない。

Q.立川市内の受験生の試験体制を万全に支えていくという立川市教育委員会の力強いバックアップが必要な時。試験監督者の適切な配置を求めるようお願いする。
次に、以前にも伺った不受験者の扱いについて改めて聞く。都立高校への応募資格のある生徒は、ESAT―Jの受験において、都内の国立や私立中学校に在籍している、または都内在住で都外の国立や私立中学校に在籍している、原則として受験対象外だが、受験することも可能な生徒および、都外在住で都外の中学校に在籍している、原則として受験対象外で、受験できない生徒を足した、相当な数の「ESAT―J不受験者」が存在することになる。今回は不受験者について「仮のESAT―J結果」を算出することによって「不利にならないよう取り扱う」とされている。具体的には、前回の質問の中でも申し上げたように、「当該不受験者と同じ高校を受験した者で、都立高校入試における英語学力検査の得点が当該不受験者と同じ者」(以下、「同点者」と略す。)このESAT―J結果の平均を用いる、という方法がとられることになった。
もちろん、この「仮のESAT―J結果」が、当該不受験者が実際にESAT―Jを受験した場合の結果を正確に推定するものであれば、「不利にならによう取り扱う」と言えるのだが、現実にはこれから申し述べる二つの統計学的理由から、「仮のESAT―J結果」が正確な推定にはならないことが予想される。
1つめは、「仮のESAT―J結果」となる平均を計算するための同点者の人数が限られているため、平均が統計的に不安定になることだ。そのことによって、英語学力検査の成績の高低と「仮のESAT―J結果」の高低が逆転し、結果として合否が入れ替わる可能性が十分にあり、不合理である。このことが本テストの最大の矛盾であると私は考えている。同点者が少ない場合には同点者に近い者を加えることとされているが、人数が限られていることに変わりはなく、解決にはならない。
2つ目は、「統計的回帰」と呼ばれる原理によって、「仮のESAT―J結果」が、全体の平均点の方向に偏る傾向があることだ。たとえば、6段階のグレードにおいて最高のAの成績の受験者について、「仮のESAT―J結果」を計算するとAより低くなる傾向があり、逆に最低のFの成績の受験者について、「仮のESAT―J結果」を計算するとFより高くなる傾向があるということがある。これでは、本来なら高いESAT―J成績が見込めるのに、制度上受験を余儀なくされる受験生にとっては不利であり、不公平だ。一方、統計的回帰によって「仮のESAT―J結果」が押し上げられる不受験者がいることは、逆にESAT―Jを受験した生徒にとって不利になり、不公平である。
不合理や不公平が生じることが予想される中、「仮のESAT―J結果」を入学選抜に使うのは危険だと考える。「仮のESAT―J結果」を活用することによって、逆転現象が生じる可能性についてどのように認識しているか、そもそも本人の能力ではなく他の受験生の点数をもとに算出した仮の点数を入試に活用することの不合理さについて、どう考えているのか東京都教育委員会に解答してもらうよう求めていたので、その回答を聞く。

A.事故や病気等のやむを得ない理由で受験できなかった生徒に対し、不受験者の措置を行い、得点を付与するものである。様々な事情、状況にある多様な生徒が受験する都立高校入試においては、こうした対応が必要であり、合理的で最善な方策であると都は考えており、市にしても同様に考えている。

この「仮のESAT-J結果」を考えたその検討委員会の中には専門家がいなかったことも報告されており、合理的で最善な方法とは考えにくい。
受験生や保護者に「丁寧な説明をしていく」と説明していた東京都教育委員会だが、このテストに反対している大学教授や専門家らなどの団体の公開質問へも答えないまま実施に突入してしまった。
本スピーキングテストにおいて、入学者選抜としての公平性が確認できるまで、ESAT―Jの結果を高校入学者選抜に使用しないことを要望する。

※質問を終えて※

個人情報の申し込みのところでは、立川市の回答として「現時点では報告として上がっていない」という回答だったのですが、報告が上がっていないだけで、実際には保護者に同意の上申し込みを行ったのか、それとも同意を得ずに生徒自身が申し込みをしてしまったかということ自体、申し込みを各家庭に任せているということでは確認がとれないため、そのことが問題ではないか、市で把握すべきではないか、という指摘をしきれなかったと反省しています。
いずれにしても、「東京都の事業であるため立川市としては意見を申し上げる立場ではない」という旨の答弁が非常に残念です。いくら東京都の事業と言っても、受験する中学3年生やその保護者も立川市内に多くいて心配の声も寄せられている中で、しっかり行政として説明責任を果たしてほしいと感じます。
不受験者の扱いについては、これだけ不合理や不公平についての指摘をしても「合理的で最善な方策であると都は考えており、市にしても同様に考えている」との回答で、驚きました。本当にこのテストが入試に活用され、疑問視され東京都教育委員会もその可能性を認めている逆転現象をそのままにしていたら、合格・不合格が入れ替わる可能性もあり、受験生が被る被害は計り知れません。引き続き東京都教育委員会の動向を注視していきます。現在疑問視されている諸課題が解決されない限り、英語スピーキングテストの都立高校入試への導入を認めることは決して許されません!
板橋区では、区内中学1年生が声かけ人となり、本スピーキングテストを不安視することから、「ESAT-Jを都立高校入試に使用しないよう求める陳情」を板橋区議会へ提出しました。賛成議員もあったものの、反対多数により不採択だったようです。私も自身が所属する会派「立憲ネット緑たちかわ」で提案をして立川市議会9月議会において「都立高校入試への英語スピーキングテスト導入の延期及び再検討を求める意見書」を提出しようと準備しましたが、議会内で一致をみることができず、意見書提出に至りませんでした。
さらに多くの方にこの問題点について知っていただき、当事者やその保護者の皆さまを含みこの問題性について共感していただける方々と一緒になって、声を上げていきたいと思います。

 ■スピーキングテストに関する意見書(案)

~12月議会一般質問のご報告②~へ続く。