12月議会一般質問のご報告②【子どもの権利が守られるやさしいまち立川へ】

【12月議会一般質問のご報告①【都立高校入試英語スピーキングテストは入試制度として適正か】の続きです

原ゆきの質問Q(以降”Q”)
こども基本法施行に伴い、立川市における子どもの権利条例やオンブズパーソン制度の設置について聞く。東京都では、2021年3月26日東京都議会において、議員提案による東京都こども基本条例を全会一致で採択した。国では、「こども基本法案」が、令和4年6月15日に国会で可決成立し、令和5年4月1日に公布される。「子どもは大切な一人の人間」であるという、本質的な価値を考え、まるごと受け入れていくその体制づくりの根拠としてようやく国や都が形づくってきた背景がある中で、立川市としては、立川市に暮らし育つ子どもたちの最善の利益を保障する子どもの権利についてどのように考えているのか。

立川市の回答A(以降”A”)
本市の子どもに関する総合計画である「夢育て・たちかわ子ども21プラン」では、子どもの権利の尊重を基本的な視点及び施策目標の第一に掲げ、子どもに関わる様々な取り組みを進める上で欠かせない視点として大切にしている。子ども基本法の目的である「将来にわたって幸福な生活を送ることができる社会の実現」や、東京都こども基本条例が目指す「こどもの笑顔があふれる社会の実現」は、本市が描いてきたあるべき姿と共通する理念であり、改めて取り組みの方向性が合致するものと捉えている。 

Q.国連で「子どもの権利条約」が採択されたのは1989年のこと。今日、子どもの虐待、暴力の被害などは急増し、依然として、いじめや不登校なども後を絶たず、障がいのある子の教育環境、そして最近では子どもの家族介護・ヤングケアラーなども問題になっている。未来を担う子どもたちが、安心して生活ができ、ゆたかな教育が保障されてこそ持続可能な社会と言えると考える。行政、家庭、地域が再度「子どもの権利条約」に謳われている内容を再確認する時と考えるが、立川市としては子どもの権利を守るためにどんな取り組みを行っているのか。

A.夢育て・たちかわ子ども21プランの周知や市民団体の取り組み支援、市民意向調査の機会等を活用し、子どもの権利の啓発と認知度の向上に努めている。
また、こどもとおとなの話し合いin市議会議場や中学生の主張大会、子ども委員会などの実施を通して、子どもの意見表明の場や参加機会の確保に取り組んでいる。
さらに、本市では、子ども・子育て支援法に基づき同プランの推進会議を設置しているが、27名の委員のうち5名が中学生、高校生であり、子ども委員が大人と一緒の協議の場に参加をしているのは全国的にも希少な取り組みであると考えている。

Q.本市では、第4次夢育て・たちかわ子ども21プランにおいて、子どもの権利の尊重はプラン全体の基本となる考え方であり、子ども施策を展開し、取り組みを進める中で、子どもの権利の視点を大切にしていると私も認識している。そこで、今まで他の議員からも質問があったかと思うが、重ねて、夢育て・たちかわ子ども21プラン推進会議からも子どもの権利条例の検討に取り組むよう要望されていると聞いている。改めて、国や都の法律・条約制定に合わせて、また、立川市独自の子どもに関する総合計画である「第4次夢育て・たちかわ子ども21プラン」の施策実現のための根拠となるよう、本市における子どもの権利条例もつくっていくべきではと考えるが、その点について認識を聞く。

A.現時点では子どもの権利に関する条例制定の予定はないが、現在、第4次プランの中間年に当たり、夢育て・たちかわ子ども21プラン推進会議において進捗確認の議論が行われている。その中でも子どもの権利条例に関する意見を聞いているので、今後、第5次プラン策定に向けた作業の中で議論をしていく。

Q.これは他の議員や夢たち推進会議からも求められている声であるので、次期計画策定のなかで、本条例の制定について議論いただくよう要望する。
「第4次夢育て・たちかわ子ども21プラン」の推進会議において、私自身は、市民メンバーとして2021年10月から、2022年7月まで会議に参加させていただいた。今回その間の議事録を改めて見返したり、平成28年度及び令和3年度に立川市が実施した、「子どもの自己肯定感などに関する調査」の報告書を改めて見直したりする中で、子どもたちのいまの姿が改めて見えてきた。

(ここからは、資料を提示する。)
この調査は、令和3年度に立川市が、市内の小学校5年生と中学校2年生を対象に行ったもの。内容としてはどちらの学年も同じような傾向が伺えたので、回収率が84%と高かった小学5年生回答結果を一部ご紹介する。

相談機関などについての認識や意見を問う、「立川市の子どものための相談機関として利用したことがあるのはどれか」(複数回答)という設問に対して、利用したことがある、と答えたのは全体の7%であり、約9割にのぼる88%の子が「利用したことはない」と回答している。この「利用したことはない」と回答した子どもたちのうち、全員が「相談することがないから」という理由であれば、特段問題はないように思うが、

その次に利用しない理由を問う設問に対して、「相談することがないから」と答えたのは70%で最も多かった一方、「相談の場所を知らないから」14%、「電話番号がわからないから」11%など、いざという時のアクセス先を知らない児童がいることが分かる。

また、「相談したことを誰かに知られたらいやだから」9%、「相談しても、よくならないと思うから」7%など、相談機関への信頼感がもてないために相談できない児童がいることも分かる。続いて、「どんなところなら相談しようと思うか」(複数回答)という設問への回答は、「どんな話でも聞いて受け止めてくれるところ」69%、「秘密が守られるところ」65%、「問題の解決方法を教えてくれるところ」51%など、さらに「こまったときにかけこめるところ、逃げ込めるところ」41%、「お金(代金)がかからないところ41%など、相談機関に対する意見は多く、多様であることが分かる。相談機関を利用したことはないけれど、一定数の子どもたちが、自分のありのままを受け入れてもらえる、あるいは解決に向けて具体的に考えてくれるということが分かれば、相談機関を利用したいのだということが見えてくる。
そして、本調査報告の中で私がいちばん注目したのが、自由記述の中で書かれた子どもたちの声だ。小学5年生では、「お母さんやお父さんに叩かれたり蹴られたりする」「ストレスを発散する場所があればいいな」「どんな人でも差別されないで相談できる所がほしい」、「いじめほどではないのですが、悩んでいます」。中学2年生では、「死にたいと思うことが多々あります」、「安心して相談できるところ、先生がいないことが悩みです。」「自分の悩みを聞いてくれる環境がもっとほしい、そして対応もしてほしい」など、他にも多くの意見があった。子どもたちの悩みが多岐に渡っていること、そしてケースによっては深刻な悩みを、誰にも相談できずに抱え込んでしまっていないか心配になるケースもあった。立川市としては、子どもたちの声を聞く場所の設定としては、どんなところがあるのか。

A.市が実施している相談事業のうち、子どもからの相談が受けられる主な場としては、子ども総合相談、教育相談、市民相談がある。

Q.これは、先ほどから申し上げている立川市の調査報告書の概要版にのっている、相談先一覧である。夢育て・たちかわ子ども21プラン推進会議の中で、子どもの相談がどの機関にどれくらい届いているのか、確認したらどうかの提案があった。機関ごとの相談数やその内容の確認は行ったか。

A.各機関から公表されている相談件数や内容等の状況について把握をしている。また、子ども支援ネットワークや青少年問題協議等の連携会議の中で、関係機関より直近の動向や課題を情報提供いただくこともある。

Q.学校や、スクールカウンセラーだけでは対応しきれない子どもたちの悩みを、地域でも受け入れられるよう窓口を広げる時がきていると感じている。立川市でも電話相談などは行っていただいているが、普段の大人との関わりの中で、自分の声や意見が尊重される経験と場づくり、子どもの味方になって解決まで導く大人の存在が確認され、信頼関係を築いていくことが必要である。子どもが困ったときに「助けて」と言えるには、「困った時に大人は助けてくれる」という、大人への信頼感を持てる社会であるかが問われる。子どもたちは相談という形だけでなく、何気ない会話の中でも困りごとを表す。困っている子どもたち。その数は増え続け、多様な背景がある。だからこそ子どもの暮らしの場である自治体施策に、子どもの目線で使いやすく、なおかつ専門的な知見からの権利擁護・権利救済の制度づくりが必要だと考えるが、市の見解は。

A.権利救済の取り組みとしてオンブスパーソン制度があるが、現時点では検討や討論は行っていない。ただ、子どもの権利を守り、問題解決を支援することは重要であると考えている。誰かが救済するという認識ではなく、誰もが救済をするという意識をもち、子どもに関わるあらゆる機関が子どもからの相談等を受けた際には、的確な相談先に迅速につなぐなど、個別の状況に即した適切な対応が取れるよう、子どもの権利啓発と連携強化に取り組んでいきたいと考えている。

それぞれの機関に任せるのでなく、立川市として子どもたちの相談ごとを把握していく必要があると考えている。先ほどのアンケートに答えてくれた子たちにどう返していくのか、乱暴な言葉を使う子も少なくないわけで、そういった子たちを支援の対象にできるような、受け止められるような制度が立川市には現状ないように思う。第4次夢育て・たちかわ子ども21プランの施策内容には、その施策目標の一番目に「子どもの権利を尊重します」とある。人権尊重にとって大切なこと、それはいろいろな人の「声を聴く」ということだと考える。これが「子どもの権利条約」の核になっている部分だ。子どもは保護の対象ではなく、権利主体として考え行動する存在でもあると位置付けた点にこの条約の意義がある。近隣でも2022年7月から小金井市、西東京市、国立市などでオンブズパーソン型の権利救済機関が設置されるようになった。立川市ではこれだけ子どもたちのリアルな声を集めてきているのであるから、是非、子どもたちの求めている、子どもたちの権利救済機関が新設されるよう要望する。

※質問を終えて※

いままで、立川市独自の「子どもの権利条例」制定について、複数の議員が質問をしたり、この必要性を訴えたりするなど、制定を求めてきた背景がありました。過去はいずれの質問にも「制定の予定はない」旨の答弁であったのが、今回は国の子ども基本法公布を控え東京都のこども基本条例が採択されたことなどもあってか、立川市としても「今後、第5次プラン策定に向けた作業の中で議論をしていく。」という、前向きな答弁に変容してきています。次期プラン策定の中で、この条例について積極的な取り組みが進んでいくよう期待を寄せられるものだと考えています。
子どもの権利擁護・救済に向けてのオンブズパーソン設置についても、立川市としてはどんな形で実現可能なのか考え、粘り強く取り組んでいきます。

12月議会一般質問のご報告③~へ続く。